SEI:SIDE
外は鬱になりそうなくらいギラギラと太陽が照り付ける。
たまにふわりと吹く風さえ熱風で、ますます鬱になりそうだ。
湿気0のカラッカラ日和の所為でやたらめった咽喉は渇くは、
日陰に居てすら汗をかくはで苛立ちはそろそろマックスに達しようとしていた。
真昼間という時間が悪い所為か、かなり暑い。
此処は私立だけあって校内の設備は文句なしで良い。
だから冷房なんかは涼さを通り越して寒さを感じる程だ。
寒いのはいただけないが、こんな暑さか寒さなら間違いなく寒さを選ぶ。
自分で外に出ておきながら今更、教室を恋しく思う。
俺は一番奥の校舎裏を目指してなるべく日陰だけを歩いた。
お天道様が丁度、真上に来ていている所為で日陰もあったもんじゃない。
それでも僅かな日陰を見つけて、俺は腰を下ろした。
カチっという音と同時に火が付いて、咥えた煙草をゆっくりと近づける。
大きく煙草を吸って、気の抜けたような溜息と一緒に煙を吐き出した。
「あーだりぃ。」
もう一度、煙草を吸すうとあーあ、と煙を吐きながら恨めしそうに煙草の火を見つめた。
煙草を止めるつもりで本数を減らし、なるべく禁煙するようにしていた矢先に、
まさかこんなことになるとは。
本数が以前に戻ったくらいならまだまし、以前より2倍近くにも増えた。
一箱で最低4日はもっていたのが、最近は軽く1日と持たない時がある。
これはいくらなんでもやばいと思っていても、どうしようもできない。
これもあの女の所為だ、と煙草を地面に押し付けた。
そして煙草を一本取り出すと再び火を付ける。
それにしても暑い。
ストレス発散に煙草を吸っているはずなのに、
これでは煙草を吸っている時さえもストレスになりかねない。
「晴〜!」
ひょっこりと小動物のように校舎から顔を出す彼女は、
他の奴等からしたら小動物みたいで可愛いのだけれど、
俺からしたら小悪魔どころか悪魔で、凶暴な獣でしかない。
また暑苦しい女が来た。
「ラッキー、タイミング良いね。」
女はそう言うと俺の煙草を図々しく横取って銜えた。
奪い返すことも言い返すこともせず、俺はまた一本煙草に火を付ける。
「不味いね。よくこんなの吸えるね。種類変えなよ。」
「煩ぇな。横着者が。」
人の煙草を横取っといてよく言うよ。
クソ女。
なんて言ったら皆に殺されるだろうな。
なんつったってこいつは学校のマドンナ白咲 天。
学校称、こいつは俺の彼女。
といってもこの女の親父が此処の学校の理事で、
俺の親父も此処の学校と同じ系列の学校の理事だからという理由で、
いわば親同士が決めた婚約者である。
なので学校では公になっているから周囲の人間は俺達を、
美男美女のカップルでお似合いだとかロマンチックだとか言う。
が、俺にも本命の彼女がいるし、彼女にも本命の相手がいるわけで
お偉い親同士が決めた婚約を断ることもできず、どろどろと引き摺ったまま
俺とこいつの関係はいつの間にかただのセックスフレンドと化していた。
「今日の夜どう?暇なら家おいでよ。」
「あー、わかった。」
煙草を吸い終わった天は俺の隣から立ち上がると
またね、と戻っていった。
こういう肉体関係という不純な関係が嫌いなわけではないが、
俺の彼女のことを思うと申し訳なくなる。
彼女は俺とこいつの関係を知っているし理解もしてくれている。
勿論、彼女には肉体関係があるまでは言っていないが。
付き合っておきながら、学校では"友達"で頼んである。
彼女にここまで迷惑を掛けておいて気が引けるが、
俺も一人の男なので性欲求は一人前にある。
それにあいつはクソ女といっても、
やっぱり可愛いとかキレイとかいう部類に入るし、
その中でもずば抜けてレベルが高いと思う。
そんな彼女に夜どう?などと誘われて男なら断れるはずがない。
自分を正当化しているつもりだが、
ふ、と自己嫌悪と後悔と申し訳なさで押し潰れそうになる。
俺はそれを掻き消すように、煙草を地面に押し付けた。