RUH:SIDE
『"またね"天ちゃん』
(次は、愉しいことして遊ぼっか)
特別校舎の4階の廊下に来ると、流雨は煙草に火を付けた。
(気強い女は良いね。タイプじゃないけど)
白咲 天は興味ない。
勿論、爽もである。
けれど、白咲 天と爽がどうなるかは面白そうだ。
蒼園 晴はついでに甚振ってやろう、面白そうだから。
小碧 折は、興味がある。
目立ちたがり屋の俺と、目立ちたがらない折。
深入りしたがる俺と、深入りするのを嫌う折。
派手な俺と、地味、ではないがあまり目立たない折。
似ていないようで似ている。
共通点は、お互い"過去"と"裏"を持つこと。
裏切るのは勿体無い。
流雨は煙草を銜えると会議室の鍵を開けた。
会議室に入り、戸を手放すと
戸が閉まりきる手前で、それは誰かの手によって阻止された。
「流雨」
その声の持ち主によって、戸が開けられる。
「・・・・折が俺側に付くのは想定してたけど、まさか此処に来るのは予想外。」
「あんたさ、全部知ってるだろ」
穏やかに招き入れる流雨を無視して
折が手加減なく問う。
どちらかというと、問い掛けというより確認するような口調で。
「全部って?」
「天と晴のこと」
「ああ、知ってるよ」
表情を一切変えずそれ以来、何も喋らないの折に困ったように笑うと、
流雨は一息吐いて口を開いた。
「ねえ、俺からも質問させて。"全部"って?他に何隠してんの?」
僅かに、折の表情が変わった。
「たぶん"それ"が折の裏だよね。そうだ、勝負しよっか」
「・・・どういった?」
「そうだね、こうしよ。どちらかが先に、お互いの"裏"を見つけた方が勝ち。」
「は?」
「怖い?誰かに裏がばれるのが。」
「そんなこと一言も言ってないだろ」
「じゃ決定。はい、ゲームスタート」
「ゲームスタートって・・・てかそのゲームやったって得も何もないじゃん」
「うーん。たぶんね、俺の考え」
流雨は煙草を銜えて火を付けた。
「折は天ちゃんか晴のどちらかの邪魔をしたいはず。たぶん晴かな。」
「で?」
「俺はそんな折の邪魔をしたいから
ゲームに負けた方が勝ったほうに従う。」
「・・・なるほどね」
「てか俺の推理あってる?」
「七割がたね」
「イマイチか・・・」
「ま、俺も簡単に全部読み取られる程やわじゃないからね。
もしかしたら今までのもフェイントかもしれないし」
そう言って余裕綽々にくつくつと笑う折に
流雨は僅かに顔を顰めた。
(ま、言えるのはこの勝負にのった時点で俺の勝ちってとこかな。)
どちらかを崩せば、もう一方も崩れる。
たぶん、俺も。
似てるんだよ、俺等。
(決ーめた)
(自分諸共みーんな堕としてやるよ。二度と這い上がれないとこまでね)
流雨はくすくすと笑い始める。
「・・・なにさ。何企んでるつもり?」
「ナイショ。」
「あっそ。ま、それじゃ俺、教室帰るね。」
「サボりに来たんじゃないの?」
「まさか。」
折は咽喉の奥で笑うと、じゃあね、と会議室を出ていった。
流雨は煙草を消すと、窓の外を眺めた。
(折は分かってくれるかな・・・?)
空にはびっしりとどす黒い雲が覆い、ゴロゴロと不吉な音をたてていた。