SOH:SIDE
頭の片隅でだんだん眠りが浅くなるのがわかって、
目が覚めかけると
耳元で携帯からメールの受信音が鳴り続けていた。
爽は薄っすらと瞳を除かせて眉を顰めると、
重たい身体を動かして布団の中から手を伸ばし携帯を掴んだ。
受信ボックスを開くと、新着メールが20件程あり
しかも丁寧に4、50秒おきで
着信音が連続して鳴るように送られている。
どう考えても睡眠を妨害しようとしているとしか思えない。
俺の携帯アドレスを知っている人間で、
こんなことをしてきそうな奴はあいつしかいない。
犯人は流雨である。
爽は嫌な予感が過ぎりながら流雨のメールを開いた。
『爽おは!今日も学校来ないつもり?4時限目始まるまでに来ないと友達やめるからね』
只管続く、同じメール。
(あーもう、なんなんだよこいつは・・・)
爽は不機嫌そうに溜息を吐くと、流雨に電話を掛ける。
呼び出し音が鳴って直、流雨が電話に出た。
『爽ー起きた?』
「起きたんじゃねーよ。お前に起こされた。」
『てか早く学校来なよ』
「今日は行く気ねえ」
『今日はってかもう3日来てないって』
「でも今日は行かね」
『4時限目始まるまでに来てね。さもないと友達やめるから』
(人の話、聞けよ・・・)
「だから行かないって」
『じゃあね。待ってるからね。』
「おい。ちょ・・・」
言いかけた途端、通話が切断された音が聞こえた。
どうやら流雨が電話を強制終了させたらしい。
こうなってしまえば、学校に行くしかない。
流雨とは一年からの付き合いだが、
どうもいまだにこいつの本心や性格が分からなかった。
こいつの冗談、キレるつぼ、物事の限度には散々、振りまわされた。
ぶっちゃけ言ってしまうと、
他人から見たら、ただのキチガイであるだろう。
きっと「4時限目始まるまでに来ないと友達やめる」は
言葉の綾でも冗談でもない。
本気だ。
何が怖いかって、あのキレイなにこにこ顔で
あいつはとんでもないことをする。
今回は何を考えているのか。
何をしでかそうとしているのか。
そんなことを考えるより、
まず学校に行ったほうが良さそうだ、と思った爽は
ベッドから起き上がると洗面所に向かった。
「あ〜だりぃ・・・」
キッチンのテーブルにはサンドウィッチと牛乳と、
その隣に手紙が置かれていた。
一言、いってきます、と書かれたメモ用紙。
(仕事か・・・)
というのもあたりまえだ。
今日は平日で、午前11時である。
専業主婦なら別だが、
爽の親は共働きで二人とも8時には出勤する。
というか、学生の爽が家にいることがおかしい。
爽は中学の頃から遅刻、欠席は多かったが、
間違っても"不良"ではなかった。
それは今もである。
世間一般から見れば不良なのだが。
なので学校側からも"不良"というレッテルを貼られている。
しかし、遅刻・欠席、頭髪は、
ただ学校に来るのが面倒くさい、"流行"である。
"不良の友達"とつるむのも、自分がそうであるせいで
普通の友達ができないからだ。
別に自分が不良気取りしたいわけではないのだ。
「あ、やべ」
ふ、と時計を見ると、大きい針が12時をまわっていた。
準備をして15分、
バス停まで歩いて10分、バスに乗って30分。
学校に着いてギリギリである。
(これ1分でも遅れたら駄目かな・・・)
聞く暇があるなら動け、だ。
爽は食べ終えた皿を流し台に置くと、
2階への階段を駆け上がった。