SORA:SIDE
「お腹空いたぁ・・・」
ぞろぞろと特別校舎から第三校舎(此処で第一校舎は2年生、
第二校舎は1年生、第三校舎は3年生である)
に繋がる渡り廊下を歩く天の3人。
「あと一時間で昼休みだよ。」
「お腹空いてる時の一時間は長いよ・・・」
「まあそうだねぇ。そういえば俺、教室にお菓子あるよ。」
「ちょうだい!てかやめて!ダイエット中だから!」
「ダイエットって・・・これ以上痩せたら色気なくなるよ。」
「こいつに最初っから色気もなんもねーよ。」
「な?」と言いながら晴はポンと教科書で天の尻を叩いた。
「変態!エロ園!」
「エロ園言うな!クソ女!」
「まあまあ、やめなって。一緒にいるこっちが恥ずかしいから。」
はー、と溜息を吐いた折は歩くスピードを速めて
天と晴のすこし前を行った。
第三校舎に入り、
第三校舎から第二校舎、第一校舎に繋がる廊下を行こうとした時、
いつもタイミング良く現れるあいつが折を呼び止めた。
「折!」
「・・・流雨。」
「なにその顔。あからさまに嫌そうにしないでよ、傷付く」
「だって嫌いだもん」
「うそ」
「流雨の教室どこ?」
「あのねー、手前から5番目。奥から2番目ね。」
「晴たちの校舎一番奥だからよく会うよね。」
「んーそうだな」
「天ちゃん元気?」
(来ると思った・・・)
「元気ですよ。ちょっとお腹減りましたけどね。」
「あはは!」
「流雨!・・・ッ間に合った?!」
天の背後から叫ばれた声に
ふ、と呼吸が止まって、
だんだん近寄ってくる足音に
ドクンドクンと心臓が脈を打つ音が身体中を満たす。
「セーフ?」
「ぎりちょんでセーフ。危うかったね。あと3分で三振空振りスリーアウトだよ。」
「よかった・・・」
聞いたことのある声に安堵の笑みを零す、
というのが普通なのだろうけれど
このときだけは、血の気が引く、というのだろうか、
ゾクリとして、嫌な汗が流れた。
(まさか、ね。そんなはずない)
「珍しいな。流雨が後輩の友達?」
「そ。あんたが学校来ない間に仲良くなったんだよ。」
「ごめんって・・・」
「明日からはちゃんと来てね。蒼園 晴と小碧 折ね。」
「よろしく。流雨には敬語?」
「いえ・・・」
「ふーん。また珍しい。じゃ、俺も流雨と同じでいいよ。」
一旦、そちら側で話が終わった後、
ちらりと、こちらを見た流雨は途轍もなく残酷な表情をしていた。
「それと、こっちが白咲 天ちゃん。」
「・・・よろしく・・・お願いします。」
「こちらこそ。黄島 爽ね。」
ピリピリと感じる空気。
発狂しそうな威圧感。
緊張感に圧迫されて、神経がおかしくなる。
逃げ出してしまえたら楽なのに。
もしこれが2、3時間続くというならば、
絶対、頭が変になるだろう。
「あの・・・先輩の名字をまだ知らないんですが・・・」
「あー俺?言ってなかったっけ?」
「はい・・・」
「ごめんねー。俺は紅城 流雨だよ。」
(紅城・・・流雨?)
どっかで聞いたことがある名前。
(思い出した。こいつ、付き合い始めた当時に爽が仲良い友達がいるって話してくれた――)
嵌められた
既にパニックを起こている天はやっとその事実を認識した。
でも、何故?
天と晴に関しては爽も了承しているはず。
二人のことが部外者に漏れたのは危険だが、
爽も晴も人間関係には敏感で
相手をしっかり見据えるタイプなので、
流雨と折はたしかに信用できるのだろう。
だが、何故こんなことになっているのか。
言えるのは、ただの偶然ではないこと。
流雨と折のどちらかが、または両方が仕組んだか。
否、晴と爽か。
どちらにせよ、たぶんターゲットは自分だろう。
「あ、もう4時限目始まる。」
「そうだな・・・会議室行こうぜ。」
「そうしよっか。」
「俺等も戻ろうぜ、折。」
「うん」
「じゃ、また」
「うん、またね。天ちゃんも。また」
「はい・・・では失礼します」