SEI:SIDE
何故どういう理由で、
俺がこんな女と一緒に委員会に行かなくてはならないのか。
根本的な理由はおいといて、あの女の所為だ。
「どうしたの・・・?晴くん」
「別に」
「白咲さん婚約者なんでしょう?」
「ああ」
「私なんかが晴くんと同じ委員会だから怒っちゃったのかなぁ。」
優越感に浸る彼女を冷ややかな目付きで見た。
お前なんかが俺と同じ委員会になるから、面白がってるんだ。
あいつは妬いているんじゃない。
お前で遊んでるんだよ。
天はこういう奴には手加減がない。
それに笑って止めを刺すような奴だ。
(あーあ、お前、甚振られるぞ・・・)
会議室に着いて、山田が会議室の扉を開けて中に入った。
「遅くなってすみません・・・」
山田がぺこりと頭を下げたので、なんとなく俺も軽く頭を下げた。
「ああ、別に良いよ。俺が美化委員会の委員長ね。」
「よろしくお願いします!」
「2-Bの山田さんと、君が"蒼園 晴"くんね。」
委員長がそう言った瞬間、会議室がざわついた。
女子からは黄色の声が上がったが、
男子からはピリピリとした緊張感が漂った。
「あ・・・」
「じゃ、話続けるから二人は席着いて。」
「は、はい・・・!」
(何でお前が照れるんだよ、気持ち悪ぃな・・・)
ほんのり頬を赤く染めている山田に身を引くと、
彼女を遠ざけて座った。
「それじゃ、美化委員会の説明はお終い。俺を知らない人もいるだろうし自己紹介しておくね。」
それまで、ぼう、と外を眺めていた晴は委員長に耳を傾けた。
「俺は3-Aの紅城 流雨。」
よろしくね、とにっこり笑う。
委員長をやるにしては珍しいタイプだ。
というか、委員長という柄でもないし、生徒会関係の係とは程遠そうで。
どちらかといえば、折や天みたいに教科係をやっていそうなタイプである。
真面目くんと言うわけでもなさそうであるし、
むしろ見たからに不良である。
何故、彼のような人間が委員長に立候補したかはわからないが、
きっと俺と同じような感じだろうと予想した。
「委員会は以上。じゃ、わりふった場所を掃除してから帰ってね。」
(面倒臭)
晴はチッと舌打ちする。
(だから嫌なんだよ委員会は・・・)
「あ、そうそう蒼園くん話があるんだけど。」
山田と会議室を出ようとして、流雨に呼び止められた。
「なんですか?」
「個人的に蒼園くんに興味あってさー、ちょっと付き合ってよ。」
「は?いいですけど。」
すると、流雨は晴の隣にぴったりくっ付く山田に気が付いた。
「ごめんね、二人で話したいから。蒼園くん借りてくよ。」
そう言うと、
「ちゃんと後で来てね」と晴の裾を掴むと会議室を出ていった。
虫唾が走ったのは言うまでもない。
二人きりになったところで、流雨は会議室の鍵を閉めた。
じり、とにこにこと笑って詰め寄る流雨に、
晴は嫌な予感がして身構える。
流雨はそれに気が付いて、困ったように笑った。
「大丈夫だって。とって食ったりしないから。」
(食うって・・・まさか、そっちの気の人・・・?)
「言っとっけど俺、女にしか興味ないよ?」
まんまと悟られ、「ですよね〜」と晴は愛想笑いを浮かべた。
「てか、敬語じゃなくていいよ。あと流雨でいいから。」
「あ、はい。じゃなくて、わかった。」
「晴だよね。白咲 天の婚約者って。」
「あー、そう。」
ふ〜ん、と流雨は窓を開けるとポケットから煙草の箱を出し、
煙草を銜えて火を付けながら、晴に問うた。
「晴は吸わないの?」
「え、俺、煙草、教室だから・・・」
「俺の吸いなよ。」
ホラ、と流雨は晴に煙草の箱をよこすと、
晴は煙草をもらい、
再び流雨に投げられたライターで火を付けた。
「此処で吸って大丈夫?」
「平気平気。一番奥の会議室、滅多に使わないからね。」
「てか、何で委員長やってんの?」
「面白そうだから」
以外な答えに晴は眉を顰めたが、
変な人であるし、下手に深入りすると厄介そうなので聞かずにおいた。
「そういえば鞄、持ってきた?」
「あ、うん」
「じゃ一緒に帰ろうよ。」
「は?美化委員長だろ・・・掃除しずに帰っちゃっていいのかよ。」
「うん。もう十分キレイだよ。」
「え?」
「"白河の清きに魚の住みかねて元の濁りの田沼恋しき"って言うでしょ。」
「ああ、日本史で習った気がする。たしか田沼意次の」
流雨はそうそう、と微笑む。
「キレイすぎる川に魚は住めないからね。少し濁ったくらいがいいんだよ。」
流雨の微笑みに薄っすらと影が射したように思えた。
独白にも捉れた言葉を不思議に思ったが、
次に見せた無邪気な流雨の笑みで、どうでもよさそうだ、と
晴は鞄を持った。
「早く帰ろ。雨、降り出すよ。」
「あ、そうだな。」
一嵐来そうな空を見上げて、晴達は会議室を出た。