SORA:SIDE



「爽・・・いる?」


屋上に出ると、生暖かい風が吹き抜けた。


「爽ー?」


「此処だよ、ここ」


「爽!」


爽の姿を見つけると、天は早足で近寄った。


「天気悪いね。」

「そうだな。」



「でさ、大事な話って・・・?」


爽はきょとんとした顔をすると、
ああ、そうそうと理解したように笑った。



「天」



自分の名前を呼ぶ爽の声にくらくらして、
天は、酔ったような表情で爽を見た。


「晴とヤッてるでしょ」


立ちくらみみたいな感覚がした。


"浮気してるでしょ"というのは慣れてるが。

これには一気に血の気が引いて、嫌な汗がつ、と流れた。
もし今、自分の顔を見ることができるならば
きっと青褪めて、間抜けな顔をしているのだろう。



「え?」



表面上では、できるだけ笑って。


分からないふり。



「だーかーら、晴とヤッたでしょ?」



笑って、けれども獲物を捕らえるように真っ直ぐ天を見て質問する爽。


ねえ、とまた上の台詞。


もはや問い掛けではなく、事実を元に確認を取っているように思えた。



「・・・・爽が言ってる意味わかんない」


自分を必死に取り繕う。

なるべく笑って。
それを爽に察知されないように。



じり、とにこにこと笑って詰め寄る爽に殺気を覚えた。
無意識に後退りした。

背中が冷やりとして、それが壁だと認識すると
天はごくりと息を呑んだ。



「だからさ、晴とこういうことした?って聞いてるんだよ。」


肩を掴まれると、強引にキスをされた。
頭を壁に押し付けられどうしようもできない。


天は爽に身を委ねるように、爽のカッターシャツを掴んだ。



すると、爽が手がスカートの中に入れ、
天は慌てて爽の身体を突き放した。


「爽!何すんのよ!」


「何って・・・だから蒼園とこういうことしたか聞いてんだよ」


「痛ッ」


爽に髪を掴まれ思いっきり引っ張られる。




「先輩を誑かして良い度胸だね。天ちゃん。」




気付いてないとでも思った?と爽が耳に直接吹き込むように言う。




上手く思考が働かない。
話すことすらままならない。



「ま、そういう事。」


爽はそんな天の様子を見ておかしそうにくつくつ笑った。



「晴と俺と、天と遊4人の"ルール"、俺が破るわ」



天は、はっとして叫んだ。


「ッでも!」


「ルール破りの"罰"だろ?一人でもルールを破ったら俺"等"は強制終了」


「爽・・・」


「お前は知らないけどさ、まず俺等は終わり。後は晴と遊」


「爽!自分は何しようとしてるか分かってるの?!」


「そりゃ分かっててやってるんだよ。分からずにやるほど馬鹿じゃねーよ」


「爽と、遊、此処に居られなくなるかもしれないのよ!」


「どうなろうと俺はやる。」


「ねえ、」


「アホらしいんだよ。お前等は良いだろうけど、振り回されてるのは俺と遊なんだよ。」




そう言って笑った爽は、
今までで一番キレイな笑顔だった。

そして、とてもとても悲しそうで辛そうだった。




爽に見とれていると、瞬時に目の前が真っ暗になった。


「・・・爽?」


『     』



爽に抱き締められたのだと分かったのは、
既に爽が身体を離した後で。



それからすぐ、爽は屋上から姿を消した。





爽は


今までで一番、温かかった。


そして


今までで一番、愛されたと思った。




ああ、そっか。

遅かった。




天は自分への皮肉な笑みを漏らした。


込み上げてくる後悔。


目が熱くなる。



確かに聞こえた。


聞こえ間違いなんかじゃない。


私は確かに聞いた。



" 愛してたよ "